CRM

 先日、ある大手金融機関のエグゼクティブの方と、当社の社長の面談に同席させていただく機会があり、そこでの話の中で印象的な言葉がありましたので書ける限り記します。お客様とのCRM戦略の構築に尽力されているとのことでした。CRMとはデータベースなどを用いて各お客様の詳細な属性情報や購買履歴、問い合わせやクレームの内容などを記録・管理し、問い合わせに速やかに適切に対応したり、その顧客に合った商品を紹介したりといった、先述のサスティナビリティを意識した長期のお客様との継続的で良好な関係の構築の取り組みです。そうすることで次回の買い替えや追加購入、別の商品の購入などで他社よりも優先的に検討してもらうことが期待でき、また、顧客の周囲の人々や各種の調査などで自社(製品)の評価やイメージの向上につながる取組です。

 

 身近な例でいえば、ある百貨店で一つの商品を買った後に、誕生月に、購買時に話した内容が手書きで書いてある心のこもった手紙をいただくと、思わず買う予定がなくても足が向いてしまいます。またアメリカのある有名なジュエリーブランドに、初任給で買った時から30年経過した時計を修理に出したとき、最初の電話ではもう部品がなくて直らないという残念な案内が来ました。それでもその店員さんは、ショップに出向いた時に「初任給で買ったから思い入れがある」という私の言葉を覚えていてくれて、それをアメリカの職人に伝えたところ、なんとか部品を探し出して、しかも時間がかかったため無償にしてくれました。そこにはマーケティング戦略という言葉や、再購入への期待という打算を超えた人の温かみを感じました。

 

 本日、訪問した金融機関は以前私が務めていた会社で中途退社という不義理な形で退職していましたが、そんな過去の1社員に対し、各部門の責任者の方十名近くのスケジュール調整をいただき、最大限の礼節を尽くしていただきました。また、5-6年の時間が経過しているにも関わらず、過去私とのやり取りを覚えていただいておりまるで昨日あったことのような会話をしていただきました。そこには、資本主義における利潤を追求する以上にお客様や社員に対して社会貢献をしたいというエグゼクティブの思いが、お人柄ににじみ出ているように感じました。

 

 また、当社の社長についても、毎朝社内のSNSに長文のコラムを毎回別のテーマで発信し続けています。その中には、一人一人の社員との過去の会話や、そのひとの特性を反映したようなセンテンスが必ず盛り込まれており、ある特定の社員に集中しないような公平感のある文章を発信していらっしゃいます。通常の大企業であれば、部門ごとのセクショナリズムに拘りルーティンに埋没しがちですが、意識のある社員であればそのコメントを読み込めば、戦略の全体の鳥観図を見ることができ、自分のルーティンがなんの意義があるのかわかります。これも広義の意味でのCRMにつながる貴重な取り組みだと思います。

 

 さらにもう一人、今回かなり年齢的には若い同僚の社員が同席しておりました。彼との出会いは自分が事業会社にいるときに外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして出入りしていた方ですが、相手がかなり役職的に偉い方でも若い人でも公平に礼節を保ちながらもフランクに接する能力を持つ人でした。その方と奇しくも同じ職場で働くことになったのですが、今回驚いたのが、相手先のそのエグゼクティブの方以外にも初対面の部長級の方に10名以上に取り囲まれても、まったくいつもと同じ表情・態度で堂々としたふるまいをしていたことです。いつも相手が誰であろうとこのスタンスを保っていることに非常に感動しました。

 

 このコラムで書いたエピソードの登場人物で共通していること、それは時が立とうが立場が変わろうが、一度別れようがもう一度会いたいと思う気持ちにさせてくれる人たちです。長い人生で考えれば、またいつかその人たちのために役立ちたいと思う、そこには何の打算も戦略もありません。CRMは何も販売者と購買者の間のはなしだけでなく、経営者と社員にも成り立つ話だと思います。人間は自分のことを覚えていてくれることに感動します。FPとして、コンサルタントとして、管理者として非常に参考になる貴重な経験をしました。

 

続く